番組ディレクターより今週の一言
今年はクリント・イーストウッド・イヤーと呼べるのではないでしょうか?『チェンジリング』『グラン・トリノ』の公開をはじめ、7月17日から始まるぴあフィルムフェスティバルでも大特集を組まれています。またうれしいことに今までDVD化されてこなかった3作品も一挙にソフト化が実現。ドン・シーゲル監督による異色サスペンス『白い肌の異常な夜』、日本では無視同然の扱いだった監督イーストウッドによる第2作『愛のそよ風』、俳優としての初出演作『半漁人の逆襲』が今月から来月にかけてリリースされているのです。
そんなイーストウッド・ブームの中、自分がプッシュしたいのが今年の初頭、ひっそりとDVDリリースされた『レールズ&タイズ』。主演は『ミスティック・リバー』で共演したケヴィン・ベーコンとマーシャ・ゲイ・ハーデンです。実はこの映画、クリント・イーストウッドではなく彼の娘アリソン・イーストウッドが初監督した作品なのですが、あまりによくできているので、何かの機会に是非紹介したいとずっと思っていました。鉄道技師トム・スタークは妻が末期ガンで、仕事に打ち込むことで日々の辛さを忘れようとしていた。そして妻メーガンは2度によるガン摘出手術をしたものの、更なる転移が発見され、余命いくばくもない状態。子供もいない絶望的な夫婦の前にある日、更なる事件が起こる。トムの運転する列車にある母子が車ごと飛び込みをし、母は即死、息子デイビーは生き延びるものの、孤児となってしまう。トムとメーガンはふとしたことからデイビーを引き取り、疑似家族が形成されていく…。という物語です。死を受け入れなければならない家族の心情、仕事と家庭の両立、孤児がどのような運命を迎えるのか、などなど様々な問題をシンプルなストーリーの中に集約し、密度の濃い1時間40分を過ごすことができます。また主演俳優にもっと興業力のあるスターを配置すれば、ある程度の話題性も作れたはずですが、そうしないところがどことなく父親の映画的良心を受け継いでいるようにも思えます。アリソンは幼少の時分から父親の撮影現場をしっかり見て来たようで、彼女の映画作りには初監督作にありがちなブレがなく、ベテラン作家のような安定感が漂っています。娘がここまでの映画を作れたことは父クリントにとっては間違いなく大きな誇りとなっているはずです。未公開作品ゆえ、どうにも見落としがちな本作ではありますが、是非とも見てもほしい一作です。ラストの余韻も格別だと思いますので、イーストウッドファンであれば、見逃さないでもらいたいと思います。(飯塚克味)
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